INTERVIEW | 2022.07.08
第2回
タロットからのインスピレーションで
ピアノを奏でるクラシック界の貴公子
【セルジョ・バイエッタ】
世界的に高い評価を受ける音楽家でありながらも、タロットカードを「人生の友となる美術品」と表現し、カードが示す世界観をピアノ曲にしてコンサートを展開するセルジョ・バイエッタ氏にお話を伺いました。
1.タロットとの関わりについて
── タロットをピアノと並んでご自身の「情熱の源」とされていますが、タロットとの出会いはいつ頃、どのようなものだったのでしょうか。
14年くらい前に初めてタロットと出会った時には、未来予測的な要素にネガティブなイメージがありました。
その後、映画監督アレハンドロ・ホドロフスキー のセミナーへ行く機会があり、そのイメージがガラリと覆されました。
潜在意識へといざない、本来の自分を整えるためにタロットが使える、という事に衝撃を受け、そこから夢中でタロットの知識を増やしていきました。
── ご自身では日々どのようにタロットを使っていますか?
朝起きて、今日はどんな心持ちで過ごすと良いのか、大アルカナのカードに訊ねています。
「感情に流されずに中立的な気持ちで過ごした方が良さそうだな」 など、引いたカードが日常をちょっと俯瞰して見せてくれます。
例えば、「13死神」 のカードが出た時には、いつもと全く違う行動を試してみたり・・・
自分の気持ちに問いかける感じで日々使っています。
── 日本ではタロットカードを占いに用いるのが一般的ですが、東京タロット美術館ではタロットカードを「自己との対話」のツールのひとつとして捉えています。
セルジョさんのお考えはいかがでしょうか。
未来予測の道具ではなく、自分自身の内面に問いかけるためもの、という点で完全に一致していて、とても共感します。
誰かに答えを決めてもらうのではなく、自分の手で未来をより良いものにしていきたい、そのためのツールですね。
2.イタリアでのタロット事情
── イタリアではタロットカードはどのように受け入れられているのでしょうか。
占いとして親しんでいる人と、自己分析や精神的成長のために活用する人、半々くらいだと思います。
最近では私の周囲の、特にクリエイティヴな人々の中で、タロットを使い始める人が増えてきています。
自分の心がタロットに投影されているような感覚に驚きつつも面白さを感じるようです。
3.タロット&ピアノコンサート
「il suono dei tarocchi ~タロットの調べ~」について
── タロット&ピアノコンサートを始めたきっかけを教えて下さい。
私自身がタロットの真の魅力を知った時の感動をもっとたくさんの方々に知って頂きたいと思ったことがきっかけです。
タロットは単に未来予測をして楽しむだけではなく、心の深い部分にアクセスできるものです。
自分人生をより良くしていくためのツールとして、タロットを使う人がさらに増えて欲しい、と願いながら回を重ねて、今ではこのコンサートがライフワークとなっています。
── コンサートの中で、タロットはどのように使われるのでしょうか。
まずはタロットの大アルカナをイメージした曲をいくつか演奏します。
それぞれのカードのエネルギーを転写する感覚で作ったオリジナル曲です。
その後会場から選ばれた1人の観客の方に3枚カードを引いてもらい、それを元に即興で編曲して演奏していきます。
通常のタロットリーディングは結果を言葉で伝えますが、私の場合はピアノでメッセージを届けています。
演奏した曲は、カードを引いた方の人生のサウンドトラックとして捧げていますが、同時にその場にいらっしゃる皆さんへのメッセージでもあります。
その場に居合わせたことの偶然性、一期一会のご縁を感じて頂きたいと思っています。
セルジョさんは観客の反応をどのように感じますか。
音楽を通して、自分が引いたカードとの接点を探ることで新たな気づきがあったり、涙を流したり、笑い出したり・・・様々な反応がありますが、共通しているのは皆さんとても驚かれるということです。
タロットが自分でも気づかない心の奥、「潜在意識の鏡」になっていることを実感します。
── 客席で目を閉じてピアノの音に耳を澄ますと、カードの持つそれぞれの重量感がダイレクトに伝わり、イメージが映像となって広がっていく感覚は今までに味わったことのないものでした。
タロットと音楽の融合、これからのさらなる展開が楽しみです。
最後にセルジョさんの今後について教えて下さい。
これからも世界中の人々へ向けて、タロットと心の奥を音楽でつなげる架け橋になりたいと思っています。
一緒に魂の旅をしましょう!
※アレハンドロ・ホドロフスキー
チリ出身の映画監督、作家、演出家、詩人など多彩な才能があり、タロット占いの専門家でもある。
映画の代表作として「エル・トポ」や「ホーリー・マウンテン」などがある。
PROFILE
- Sergio Baietta セルジョ・バイエッタ
ヴェローナ出身のピアニスト。
ヨーロッパを拠点に幅広く活動し、各国で高い評価を受ける。
バロックからロマン派のクラシックをはじめ、ジャズや映画音楽等、広いレパートリーをこなし奇才と評される。
日本でも東京フィルハーモニー交響楽団との共演のほか、各地で定期的に演奏している。
指揮者、作曲家としても活躍中。